各部門・センター

最先端ロボット手術センター

各部門・センター紹介

ごあいさつ

センター長 佐藤 寿彦Toshihiko Sato

福岡大学病院は2008年2月に地域がん診療連携拠点病院として認定され、地域のがん診療に貢献しています。
以来がんの治療では最先端の医療を提供してまいりました。

この度、効率的に最先端の医療技術を安心して患者さんに受けていただくことを目的として、2020年4月より最先端ロボット手術センターが新設されました。

日本でダビンチ(手術用ロボット)が導入され、外科治療に用いられるようになって10年以上が経過しています。
福岡大学病院では2015年よりダビンチXiシステムを導入し、消化器外科(食道がん・胃がん・大腸がんなど)・腎泌尿器外科(前立腺がん・腎臓がんなど)・呼吸器外科(肺がん・縦隔腫瘍など)・婦人科(子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮体がんなど)の各診療科でロボット支援下手術を施行してまいりました。
福岡県下のみならず九州地方でのロボット手術の中心として、現在年間約200例近い多数の手術を施行しています。

特徴・特色

当センターの特色として、プロクター(指導者)資格をもつ外科医(呼吸器外科3名、消化器外科4名、腎泌尿器外科2名、婦人科2名(暫定))が在籍している他、メンター有資格者として長谷川傑主任教授(消化器外科)及び佐藤寿彦センター長(呼吸器外科)、吉村文博講師(手術部)が在籍しており、九州地方初のロボット指導教育施設として各地からロボット手術の習得に来られる外科医の先生の指導にあたっています。

ダビンチ手術の利点

ダビンチ手術では、内視鏡手術で使われていた鉗子や鋏が自由かつ細かく動くロボットアームにかわり、手術の精度が向上しています。またスコープもダビンチの場合、双眼のため人間の眼と同様、立体視ができます。ロボットアームは手の震えを伝えることがないので、スムーズで非常に細かく複雑な作業も可能になります。
一方で、ロボットアームは患者さんの体に入る場所が動かないように設定されていますので、傷口の痛みが非常に少なく、内視鏡手術よりさらに患者さんの負担が楽になっています。

内視鏡手術特有の危険性は残念ながらダビンチ手術にもあります。
大きな傷口から外科医が自分の目でみて、触りながら手術を行う通常の開胸手術と異なり、スコープと言われるカメラを体の中に差し込んで限られた視野の中で手術をすること、自由度は高いものの触感がない手術道具を使うことなどがダビンチ手術特有の危険性といえます。
手術の危険性についてもよくご理解いただけるよう十分にご説明いたしますので、各担当医へお気軽にお問い合わせください。

ロボット手術の費用について

ロボット支援手術を受けるために、以前は患者さんに高額負担をお願いしておりました。
しかしながら2018年から公的保険で手術を受けられるがん・疾患の種類が増加した結果、高額療養費支給も受けられますので、今や特別な治療ではなくなってきました。

各種がんに対する福岡大学病院のロボット手術

消化器領域

直腸・結腸がん

直腸・結腸がんに対する手術は難しく、手術の質が「手術後の合併症」や「がんの再発」などの患者さんの予後を大きく左右することが知られています。
この点においてロボット手術は、腹腔鏡手術より繊細な手術を行うことができることが期待できます。

豊富な症例数 年々症例数は増加してきており、昨年は300例の直腸・結腸がんの手術を施行しております。
ロボット手術は、そのうち約70例を施行しており、現在まで200例の豊富な経験があります。
確かな技術 消化器外科の長谷川傑主任教授は、ロボット直腸・結腸がん手術のプロクター・メンター(指導者)であり、当院はロボット手術の見学・教育施設です。直腸・結腸がんに対するロボット手術のプロクター・教育施設とも九州では初の施設になっています。
集学的治療 手術だけでなく抗がん剤や放射線治療を組み合わせて治療を行ったほうが良い成績が得られます。
また、ロボット手術以外にも経肛門手術など様々な手術方法が開発されています。
消化器外科ではこれらすべての治療を行うことができ、患者さんの病状にあった治療を選択することが可能です。
食道がん

食道は胸の中央に存在しているため開胸手術では見えづらい、胸腔鏡手術では肋骨と肋骨の間が狭く、手術器具の操作に制限を受けやすいといった難点がありました。
ロボットは手術器具先端に関節機能を持つため、肋骨に操作を制限されることなく良好な視野で手術が可能です。
また、手術中は心臓や呼吸の動きによって食道も動いていますが、手振れ防止機能があるので、非常に安全にリンパ節郭清が可能です。

胃がん他

胃がん・粘膜下腫瘍(GISTなど)に対する幽門側胃切除術、噴門側胃切除術、胃全摘術にロボット手術を導入しています。
進行胃がんや噴門側胃切除後の観音開き法再建、残胃がんなどにも導入しています。

詳しい解説を福岡大学消化器外科ホームページにて紹介しています。
食道がん・胃がん・直腸・結腸がんと診断され、どこで診療を受けようか迷っておられる方は是非ご相談下さい。

呼吸器領域

肺がん

近年日本では、死亡原因の一位は男女ともがんで、部位別では肺がんが一番多いことが分かっています。
がんにはステージ(進行度)に合わせた治療を行うことが基本ですが、手術治療を受けられる患者さんの数は、この10年ほどで倍近くに増えてきています。

福岡大学病院では、早くから低侵襲に内視鏡を用いて肺がんを切除する手術に取り組んできました。
さらに進化した内視鏡手術と言えるロボット支援下手術にも早い時期より取り組み、現在呼吸器外科では、ロボット支援下手術指導医資格を持つ医師(プロクター)が3名在籍し、2022年は肺がん56例で九州でもトップクラスの症例数でした。ロボット手術に10年以上の経験のある佐藤をはじめ、熟練したスタッフが進行癌など高難度手術にも対応しています。
ロボット支援下肺がん手術では、小さな創で術後数日から一週間程度で退院していただくように治療を行っています。

縦隔腫瘍(胸腺がん・胸腺腫・胸腺嚢胞)・重症筋無力症

縦隔腫瘍は比較的まれですが、外科的に切除することが望ましい腫瘍です。
内視鏡手術では、心臓に隣接した部位の腫瘍を完全に切除するのは難しく、ときに胸骨(心臓の前の骨)を大きく切開して摘出手術が行われていました。
しかしながら、ロボットを使用することで小さな創から迅速に腫瘍を切除することが可能になっています。他院でロボットでは施行不可能とされた症例にも安全に施行しています。

また重症筋無力症では、胸腺腫が合併することがあり、両側の胸腺を摘出することで症状の軽快・寛解が得られることがあります。
こちらにもロボットを使用した拡大胸腺摘出術が施行可能ですので相談にお越しください。

腎泌尿器領域

前立腺がん・腎臓がん・膀胱がん

腎泌尿器疾患におけるロボット手術は、2012年に前立腺がんに対するロボット手術が保険適応となって以来、2016年に腎細胞がんに対する腎部分切除術、2018年には膀胱がんに対する膀胱全摘除術が保険診療の一環として施行可能となり、全国の施設でロボット機器の導入が進みました。

福岡大学病院では2015年にダビンチXiという最新型のロボットが導入され、同年にロボット支援前立腺全摘除術、2017年よりロボット支援腎部分切除術を開始し、着実に症例数を重ねているところです。膀胱がんに対しては、2021年より、ロボット手術を開始しています。

また2020年4月には、腎盂尿管移行部通過障害(腎盂尿管移行部狭窄症)に対しロボット支援腎盂形成術が保険適応となりました。これまで乳幼児は小切開、学童期より大きな症例は腹腔鏡で手術を行ってきましたが、今後は患者さんの体格やご要望に応じ、ロボット手術も選択肢の一つとなります。

当院では、ロボット支援前立腺全摘除術のプロクター(指導者)2名、ロボット支援腎部分切除術のプロクター1名、ロボット支援膀胱全摘除術プロクター1名、ロボット手術認定医5名の体制で手術を行っています。疾患の種類あるいは病気の状態、患者さんの状況により最適な治療法は異なりますので、是非それぞれの主治医とご相談ください。

婦人科領域

子宮筋腫・子宮体がん

婦人科領域では、2018年4月に子宮筋腫や子宮腺筋症などの良性腫瘍と早期の子宮体がんに対するロボット手術が保険適応となり、当科でもプロクター1名(暫定)、ロボット手術認定医3名の計4名体制で、現在まで100例以上を行っています。

子宮筋腫や子宮腺筋症は、30歳代後半から40歳代の働き盛りの成人女性が罹りやすい病気で、月経の量が多くなって貧血を起こしたり、月経痛がひどくなって仕事や日常生活に支障を来したりします。
残念ながらホルモン療法だけで治ることは少なく、子宮を全摘する手術によってのみ完治できます。

子宮体がんは月経が起こったり、妊娠の場所となったりする子宮内膜から発生するがんです。子宮体がんのすべてではありませんが、その多くは肥満が大きな要因になっています。最近では40歳代後半から60歳代で発症することも多く、未婚の女性、妊娠・出産の経験がない、または少ない女性にリスクが高いことが分かっています。
多くの子宮体がんの症例では、骨盤の中のリンパ節を通じて他の臓器への転移が起こる可能性があるため、手術としては子宮を全摘することに加え、転移を予防するために骨盤内のリンパ節を摘出する必要があり、精度の高い手術を必要とします。

子宮筋腫・子宮腺筋症・早期の子宮体がんに対しては、これまでは開腹手術や腹腔鏡手術が行われてきましたが、肥満の問題で開腹手術が選ばれることが多いのが現状でした。
しかしながら、ロボット手術はその問題を克服し、腹腔鏡手術と同様に手術の創も小さく、カメラで術野を拡大して手術できるため、リンパ節摘出も開腹手術を上回る精度で行えます。
また、出血や術後の合併症の頻度も少ないため、開腹手術よりも入院期間が短く、より多くの女性の社会復帰が早期に可能となっています。
患者さんの病気の状態や状況によって適切な治療法を提示させていただきますので、是非ご相談ください。