各部門・センター

炎症性腸疾患先進治療センター

各部門・センター紹介

ごあいさつ

センター長 平井 郁仁Fumihito Hirai

当院では消化器内科・消化器外科を中心に炎症性腸疾患(IBD)の診療に力を注いできました。福岡大学病院の理念である"あたたかい医療"をIBD診療で実現するため、炎症性腸疾患先進治療センターの設立を希望しておりましたが、岩﨑病院長にご承認いただき、20214月に開設の運びとなりました。

当センターの診療部長として設立の意義、経緯、活動内容および今後の方針などについて、以下にご紹介します。当センターは開設されたばかりで、課題も多くまだまだ十分な体制とはいえません。しかし、この最初の小さな一歩を偉大な一歩にしたいと思っております。 "疾患"ではなく"患者"を診ることを大前提とし、全てのIBD患者さんに「専門的で総合的な診療」を確実に提供するために、これからも努力してまいります。

特徴・特色

疾患の特徴とセンター化の意義

炎症性腸疾患(IBD)とは狭義には潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)のことを意味します。本邦にはUC罹患者が22万人以上、CD罹患者が7万人以上存在し、これは日本の人口の約0.2%に相当し、1000人に2-3人が罹患している計算になります。今後も増加傾向が続くと見込まれており、社会的あるいは医療経済的な課題となっています。

また、IBDは若年発症が一般的であり、成人だけでなく小児期の発症が少なくありません。幅広い患者層に対して的確な診断と治療を施すことが求められ、就学、就労などの社会生活を可能にすることが治療目標です。治療にはいわゆるQOLだけでなく、結婚、妊娠・出産などのライフイベントにも配慮が必要です。

罹患者数が増加し続ける中、IBDの診療には幅広い患者背景に対する「専門的で総合的な診療」を提供できる施設が社会的にも切望されています。 そこで、ハイボリュームセンターである当院でIBDの診療体制をより強固なものにすべく炎症性腸疾患先進治療センターが誕生するに至りました。

センターの診療内容と特徴

言うまでもなくIBDの患者さんを正しく診断し、適切な治療に導くことがわれわれの最も重要な責務です。当院ではUC500名、CD300名程度の患者さんを診療しており、周囲の医療機関はもちろん、九州各県を含む隣県や関西・関東などの遠方からも患者さんの紹介が絶えません。

これにはいくつか理由があります。その一つは、われわれがX線検査、内視鏡検査などの画像検査を得意としていることです。特に最近の内視鏡検査の進歩はめざましく、従来は困難であった小腸もカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡を用いることで容易に観察することが可能となりました。CDでは小腸病変の検索は診断、治療に必須であり、検査数は右肩上がりに増えています。また、診断だけでなく、腸管狭窄による外科手術を回避するための内視鏡的バルーン拡張術も積極的に行っており、この治療を目的とした紹介も少なくありません。

もう一つの理由としては、高い技術を持つ外科医がいることが挙げられます。IBDは個々の症例毎に病像や経過が大きく異なり、内科治療だけではうまくいかない症例も少なくありません。優秀な外科医の存在は、外科的治療の実践だけでなく、積極的な内科治療を後押ししてくれます。

また、治療選択のための的確な診断や活動性評価には病理学的評価は欠かせません。当院のIBD診療が信頼されているのはこのように消化器内科、外科医および病理医がスムースに連携して診療にあたっているからだと思います。消化器内科医にとっては恵まれた環境であり、これからもこの伝統を継承していきたいと考えています。

センターの活動内容

センター開設にあたり、診療体制の改変といくつかの施策を予定しています。

  • IBD専門外来
    IBD専門医が外来を務めるIBD専門外来(水曜日と木曜日)を開始しました。IBDの治療は進化しており、生物学的製剤をはじめ多くの新規治療薬が治療の選択肢となっています。これらの薬剤は高い治療効果を発揮しIBD患者さんの福音になっていますが、一方で複雑化する診療のため適切な治療選択やわかりやすいインフォームドコンセントの実践が容易ではない状況にあります。
    初診や治療抵抗性のIBD患者さんには専門医の診療が必要であり、専門外来で対応したいと考えています。IBDに関する診断、治療でご紹介いただく際には、事前に当院地域医療連携センターにご連絡いただければ、確実にIBD専門外来を活用していただくことが可能です。

  • 消化器内科カンファレンス
    毎週火曜日に消化器内科入院中の症例を中心にカンファレンスを行っています。外来患者さんに関する相談や他科からの相談にも門戸を広げています。

  • IBD多職種カンファレンス
    IBD診療に関わる診療科の医師(消化器内科、消化器外科、小児科、産婦人科、病理部など)、看護師、薬剤師、管理栄養士、他のコメディカルスタッフやソーシャルワーカーで構成されるメンバーが月に一回集まって、症例検討や各部門の改善点などを検討します。センター開設の大きな目的の一つは、職種や診療科の垣根を越えたチーム医療を実践することです。IBD患者さんに「専門的で総合的な診療」を提供するためにチーム医療を軸とした多職種のサポートで支えていきたいと考えています。

  • IBD教室
    患者さんやご家族には疾患への理解や治療に対する啓蒙を深める必要があります。糖尿病教室はいろいろな規模の病院で行われていると思いますが、われわれはIBD教室を開催することで啓蒙活動の一環としたいと思っています。また、相談窓口としての機能も期待しています。月一回の開催を目標にしていますが、今後、開催日時や場所などを病院ホームページで告知していきますので、ご確認いただければ幸いです。