診療科

消化器内科

診療科紹介

ごあいさつ

診療部長 平井 郁仁 Fumihito Hirai

当科は、消化管グループと肝胆膵グループが一緒になって1つの診療科を形成しています。昨今では、診療科が細かく枝分かれしている大学病院も少なくありませんが、当科は消化器内科領域を全てカバーし、一体感をもって診療・研究にあたっています。

日本人の死因の第1位は癌であり、全癌死亡者に占める消化器癌(食道、胃、大腸、肝、胆、膵)の割合は男女とも約6割を占めています。高齢化社会が続く中、癌患者は今後も増えると予想されていますが、早期に発見し、適切な治療を施せば決して怖い病気ではありません。当科では消化器癌のより早期の診断および内視鏡を用いた低侵襲治療に注力しています。また、良性疾患でも、例えば炎症性腸疾患などはQOLに大きな影響を与え、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。こうした消化器疾患の診療には豊富な知識と経験が必要であり、大学病院の役目の一つと考え、真摯に取り組んでいます。

肝胆膵グループは、C型肝炎に対する経口抗ウィルス薬治療、B型肝炎に対する抗ウィルス薬投与、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎の治療を行っています。C型肝炎は抗ウィルス薬の進歩でウィルスを完全に除去せしめることも可能となっています。しかし、こうした治療の進歩の反面、肝硬変に陥った症例では腹水のコントロールや門脈圧亢進症に対しての治療が必要となってきます。食道静脈瘤に対しては、内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮術を、難治性の胃静脈瘤に対しては当院放射線科と協力し、バルーン下逆行性経静脈的瘤塞栓術を行っています。

肝癌患者には画像診断に加えて早期肝癌に対してラジオ波焼灼療法を行っています。また、肝動脈塞栓術、埋め込みリザーバーを用いた動注化学療法を行い、進行した肝癌患者の治療も積極的に行っています。最近では、外科的切除、肝動脈塞栓術およびラジオ波焼灼療法が適応とならない症例へも新しい抗がん剤治療を用いて治療しています。胆膵疾患、特に内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や胆膵疾患の治療内視鏡治療は、これまで主に消化器外科の先生が担当してきました。しかし、消化器内科に胆膵専門医が加わり、今後は消化器内科でも胆膵系の検査および治療内視鏡を積極的に行う予定です。

消化管グループは癌などの腫瘍性疾患、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を中心に診療していますが、ERと連携し消化管出血などの緊急症例も数多く取り扱っています。

食道・胃・大腸癌に対しては正確な診断(範囲や深達度を含む)が重要であり、X線、内視鏡、超音波内視鏡を用いて、きちんとした診断を心がけています。特に内視鏡に関しては、通常内視鏡や拡大観察はもちろん、Narrow band imaging (NBI)やBlue Laser Imaging(BLI)などの画像強調観察内視鏡(Image-Enhanced. Endoscopy)を早くから取り入れ診断に取り入れています。

また、企業とのタイアップで新規機種をいち早く使用可能な体制をとっています。上述のように消化管癌を早期発見することに努めていますが、当科で発見した症例や紹介例のうち、適応を有する早期癌に対しては内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal resection, ESD)や内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection, EMR)を積極的に行っています。特にESDは内視鏡を使って比較的広範囲に切除できるため、遺残・再発が少ない、腹部の傷がない、そして臓器を温存できるという数々のメリットがあり、多数例で良好な治療成績を得ています。また、大腸内視鏡の挿入やESDなど熟練を要する手技に関しては、シミュレーションシステムや動物検体を用いた内視鏡教育を卒後早い段階から行っています。

クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、本邦で増加の一途をたどっており、社会的にも問題となりつつあります。教室では、この炎症性腸疾患の診断と治療にも力を注いでおり、従来治療に加え、抗TNFα抗体(レミケード、ヒュミラ、シンポニー)、抗IL-12,23抗体(ステラーラ)、抗α4β7インテグリン抗体(エンタイビオ)、免疫抑制剤(イムラン、プログラフ)、白血球除去療法などの新規治療を適正に使用し、良好な治療成績を得ています。また、原因不明の疾患であるため、病態解明のための基礎的・臨床的研究にも力を入れています。

小腸は古くは暗黒大陸と呼ばれ、中々きちんとした検査が不可能な臓器でした。しかし、近年、小腸内視鏡検査が普及しており、この領域の発展はめざましいものがあります。当科でも、ダブルバルーン内視鏡とカプセル内視鏡を診療に取り入れており、原因不明の消化管出血や炎症性腸疾患の評価などに役立てています。特に、ダブルバルーン内視鏡を用いることにより、上部消化管や大腸のみならず小腸でも内視鏡的止血、ポリペクトミー、そして狭窄に対するバルーン拡張術などの治療が可能であり、多くの症例に行っています。

当講座は、消化器疾患の診断・治療を通じて地域医療に貢献することはもちろんのこと、臨床教育にも力を入れ、優秀な消化器内科医を育成することも目標の一つにしたいと思っています。 "疾患"ではなく"患者"を診ることを大前提とし、福岡大学病院の理念である"あたたかい医療"の実践に努めてまいりたいと思います。

特徴・特色

当科では月曜日から金曜日まで毎日外来に医師が出ており、専門的な対応が可能です。状況に応じて予約日以外にも診療を受けることが出来ます。

上部消化管内視鏡検査および腹部超音波検査は、基本的には予約制ですが、朝11時までに絶食でお越し頂ければ当日に検査が受けられます。但し、内視鏡検査については予約状況によって検査が受けられない場合もございますのでご了承ください。大腸内視鏡検査については、当日検査は受け付けておりません。緊急を要する症状の場合は、この限りではありません。

大量消化管出血や肝性脳症、食道胃静脈瘤破裂、肝癌の自然破裂、劇症肝炎などの緊急性の高い疾患に対しては当院救命救急センターと綿密に連携し、24時間体制で迅速な対応を行っています。