各部門・センター
炎症性腸疾患先進治療センター
各部門・センター紹介
ごあいさつ

炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)を含む慢性炎症性疾患であり、患者数は増加の一途をたどっています。当センターは、IBD患者さんに対し、最新の診断技術と高度な治療を提供する専門機関として、大学病院内に設立されました。私たちは、「病気をみる」ではなく「患者さんをみる」ことを最も大切にし、専門的かつ総合的な診療を行うことを目指しています。
診療は、消化器内科・消化器外科を中心に、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどの多職種が連携するチーム医療を実践し、患者さん一人ひとりのライフスタイルに寄り添った治療を提供します。
特徴・特色
IBD診療のハイボリュームセンター
当院では、潰瘍性大腸炎の患者さん約1,000名、クローン病の患者さん約500名を診療しており、九州各県だけでなく、遠方の関西・関東からの患者さんも受け入れています。患者数の増加とともに、より高度な診療体制を整え、地域の医療機関と連携しながら診療の質を向上させています。
先進的な診断技術と治療
- 高度な診断技術
消化管内視鏡検査(カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡)や腹部超音波検査、CT、消化管造影検査などを活用し、消化管病変の詳細な評価を実施します。特にCDでは、小腸病変の診断と治療が重要であり、積極的に最先端の技術を導入しています。厚生労働省が管轄する難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班では、診断基準改訂プロジェクトの責任者として、IBDの診断基準作成や改訂に携わっています。 - 生物学的製剤・JAK阻害薬などの最新治療
IBD治療は飛躍的に進歩しており、新たな分子標的薬が次々に登場しています。当センターでは、患者さんの疾患活動性やライフスタイルに応じた最適な治療法を提案し、患者さんと医師が一緒となって治療方針を決定する「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」を実践しています。なお、先進治療の一種ともいえる新規開発中の薬剤を用いる治験にも積極的に参加しています。 - 内視鏡的バルーン拡張術の実施
腸管狭窄を伴うCD患者さんに対し、外科手術を回避するための内視鏡的バルーン拡張術を積極的に行っています。これにより、患者さんの負担を軽減し、より良いQOLを実現します。 - IBD外科診療
当センターでは、UCやCDに対する外科治療を積極的に行っています。潰瘍性大腸炎の手術適応は、重症・難治例、長期罹患による発がんリスクの増加、内科的治療抵抗性のケースなど多岐にわたります。当院では、患者さんのQOLを最大限考慮し、腹腔鏡下手術をはじめとした低侵襲手術を積極的に採用し、術後の回復を早める工夫をしています。また、ストーマ造設が必要なケースでは、専門のストーマ外来と連携し、手術前後のケアを充実させています。CDの外科治療では、腸管狭窄・瘻孔形成・膿瘍形成といった腸管合併症や肛門病変(痔瘻・直腸膿瘍・肛門狭窄)に対し適切な治療を提供します。
当センターでは、内科・外科が緊密に連携し、IBD患者さんに最適な治療戦略を提供する「総合的IBD診療」を実践しています。難治性症例に対しても、個々の患者さんの病状に応じたオーダーメイドの治療を提案し、より良い生活の質を維持できるよう努めています。 - IBD患者の妊娠・出産をサポート
産婦人科と連携し、妊娠中のIBD管理に関する専門的な相談窓口を設置。妊娠・出産に関する不安を解消し、安全な出産をサポートします。
チーム医療の実践
IBD診療は、内科医・外科医だけでなく、多職種による包括的なサポートが必要です。当センターでは、以下のチーム体制を整えています。
- 看護部
IBD患者さんは、長期的に病院への通院が必要となります。看護師は、患者教育や自己管理支援を通じて症状コントロールを促し、治療の継続を支援しています。身体的ケアでは症状管理、精神的ケアでは不安軽減とサポートを行い、抱えている不安や問題などを傾聴し、解決に向けて支援していきます。定期的に医師と多職種と協力し、包括的なケアプランを作成し実践しています。継続的なフォローアップを行い、再燃予防や治療計画の調整をサポートしています。IBD教室では患者さんやご家族の不安や困りごとを医療者と共有し、支援に繋がるよう運営しています。一番身近な窓口になれますよう努めていきますので、いつでもお気軽にお声掛けください。 - 薬剤部
炎症性腸疾患(IBD)は長期間に渡り治療を継続していく必要があるため、薬剤師は患者さんの病状を把握して薬の説明を行うと共に、患者さん個々の病態に合った処方提案や処方薬の有効性の確認を行っています。また患者さんが安心して治療が受けられるよう副作用の未然回避や早期発見に努めることで、質の高い医療が提供できるよう日々努めています。薬の効果や副作用だけでなく、費用面や管理方法などお困りのことがありましたらお気軽にお声かけください。 - 栄養部
栄養面で患者さんをサポートすることが、病院での管理栄養士の役割です。医師の指示のもとで、個々の患者さんに合わせた必要栄養量の算出や食事の管理、栄養指導を行なっています。退院後は家庭で無理なく食事管理ができるように、生活習慣や食習慣などを傾聴し、考慮して栄養指導を行なうように心掛けています。食に対する困りごとや疑問など、入院中でも外来でもお気軽にご相談ください。 - 地域連携室より
病気や怪我によって療養面や社会生活面で困った問題が生じたとき、患者さんやご家族の困りごとについて、解決の糸口が探せるよう、医療相談窓口のソーシャルワーカーや看護師が相談をお受けしています。炎症性腸疾患の患者さんは、長期的な療養を必要とする方が多く、治療と学校・仕事など生活と両立していくことや、医療費負担について不安を感じる方がいらっしゃると思います。一人で悩まず、どんなことでも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
主な診療・活動内容
- IBD専門外来
月曜日~金曜日にIBD専門医による外来診療を行っております。地域の医療機関と連携して適切な診療を提供します。近年、炎症性腸疾患の診断技術や薬物治療の進歩は著しく、特に難治例においては高い専門的知識と技術が求められます。初診や治療抵抗性のIBD患者さんには専門医の診療が必要であり、専門外来で対応いたします。IBDに関する診断、治療でご紹介いただく際には、事前に当院地域医療連携センターにご連絡いただければ、確実にIBD専門外来を活用していただくことが可能です。 - 消化器内科カンファレンス(毎週開催)
毎週火曜日に消化器内科入院中の症例を中心にカンファレンスを行っています。外来患者さんに関する相談や他科からの相談にも門戸を広げています。 - IBD多職種カンファレンス(毎月開催)
IBD診療に関わる診療科の医師(消化器内科、消化器外科、小児科、産婦人科、病理部など)、看護師、薬剤師、管理栄養士、他のコメディカルスタッフやソーシャルワーカーで構成されるメンバーが月に一回集まって、症例検討や各部門の改善点などを検討します。センター開設の大きな目的の一つは、職種や診療科の垣根を越えたチーム医療を実践することです。IBD患者さんに「専門的で総合的な診療」を提供するためにチーム医療を軸とした多職種のサポートで支えていきたいと考えています。 - IBD教室(年4回開催)
IBD患者さんやご家族が疾患への理解を深め、適切な治療や日常生活の管理に役立てられるよう、当センターではIBD教室を定期開催しています。糖尿病教室のように、多くの病院で行われる疾患教育プログラムと同様に、IBDについても正しい知識を提供し、患者さんが主体的に治療に取り組める環境を整えることを目的としています。また、患者さん同士やご家族が情報を共有し、不安を軽減できる場となることも期待しています。
開催頻度は年4回を予定しており、具体的な日時や開催場所については、外来の消化器内科受付や病院ホームページで随時お知らせいたしますので、ご確認ください。教室では専門医や多職種スタッフが最新の治療情報や日常生活の注意点について講演を行い、患者さんからの質問にもお答えします。
また、教室での講演内容はYouTubeの『福岡大学病院 公式チャンネル』で公開しておりますので、遠方の方や当日参加が難しい方もご視聴いただけます。興味のある方はぜひご覧ください。
進路を考える医学生・研修医の皆さんへ
当センターでは、IBD診療に興味のある医学生・研修医の皆さんの見学・研修を歓迎しています。
- IBD診療の最前線での実践的な研修が可能(炎症性腸疾患学会指導施設)
- 内視鏡診断技術、薬物療法、外科的治療の実際を学ぶことができる
- 多職種連携の現場を体験し、患者中心の医療を実感できる
興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
- お問い合わせ・受診案内
- IBD専門外来の予約
- 医学生・研修医の見学・研修希望
福岡大学病院炎症性腸疾患先進治療センターは、すべてのIBD患者さんがより良い生活を送れるよう、最先端の医療とチーム医療で支えていきます。