耳鼻咽喉科

がんについて

頭頸部腫瘍全般

良性の甲状腺腫瘍や耳下腺腫瘍、頸部腫瘍は摘出術が基本となります。
一方、悪性腫瘍については、手術・放射線治療・抗がん剤等の投与を基本とした集学的治療を行います。特に頭頸部癌の罹患総数は約3.1万人/年で、全癌総数の5.3%程度とそれほど多くありません。また、頭頸部癌は生活習慣に強く起因し、その習慣を見直すことでかなり予防することが可能です。耳鼻咽喉科が関わる頭頸部癌の最大の危険因子は喫煙と飲酒と考えられ、それ以外はウイルスや炎症などが要因となります。つまり、頭頸部がんの予防のためにはこれら二大因子への対策が必要となります。下に頭頸部発癌リスク要因をまとめています。

口腔がん 口腔内不衛生,喫煙,飲酒
鼻副鼻腔がん 慢性副鼻腔炎
上咽頭がん EBウィルス,東南アジア在住
下咽頭がん 梨状陥凹型 男性,喫煙,飲酒
輪状後部型 女性,慢性貧血
喉頭がん 声門上部 喫煙,飲酒,口腔内不衛生
声門部 喫煙,多弁

頭頸部癌では喫煙と飲酒以外にも口腔内不衛生や副鼻腔炎などの炎症性疾患、ウィルス感染が関与しています。そのため、多くの頭頸部癌では禁煙・禁酒とは言いませんが、日常生活を見直すことにより発癌リスクを下げると考えられます。

治療では発声や嚥下など機能の温存を最優先としていますが、進行例においては拡大手術や放射線、抗がん剤に加え分子標的剤を投与する複合的な治療を選択します。
その際は形成外科や胸部・消化器外科、放射線科、血液腫瘍内科とのチーム医療を行い治療中・治療後の副障害や機能障害が出来るだけ少なくなるような工夫も行っています。

次に領域別頭頸部癌の概要を簡単に説明します。

口腔がん

口腔内に発症する癌のうち舌癌が約60%と最も多く、歯肉、頬粘膜、口腔底、硬口蓋、口唇に分類されます。頻度の高い舌癌では前癌病変として白板症や紅板症を認めることがあり、部位では舌縁>舌尖>舌下面の順に多く、義歯やう歯などの接触による慢性機械的刺激が誘因とされています。

鼻副鼻腔がん

鼻副鼻腔では上顎癌が最も多いですが、近年では慢性副鼻腔炎(蓄膿症)患者の減少や病変の軽症化に伴い罹患者数は減少しています。上顎癌では一側性の鼻閉や鼻出血、顔面痛、物が二重に見える複視の症状を伴う事があります。

上咽頭がん

上記発癌リスク一覧にも示すようにEBウィルスの関与が示唆され、発症頻度に地域差があります。鼻閉、鼻出血、中耳炎、難聴、複視などの様々な症状を併発する場合があります。

中咽頭がん

喫煙、飲酒が関わる疾患ですが、最近ではHPV(ヒトパピローマウィルス)の関与が指摘されています。HPVが関与する場合、比較的若年(30-40歳代)での発症がみられますが、放射線や抗がん剤治療に反応しやすいと考えられています。

下咽頭がん

特に喫煙や飲酒が強く関与する疾患です。圧倒的に男性に多く50-70歳代が好発年齢となります。比較的症状に乏しく、進行してから発見される事が多いと考えられます。発症部位により梨状陥凹型、輪状後部型、後壁型に分類されます。進行癌で拡大手術を行った場合、空腸による再建術を行います。

喉頭がん

頭頸部悪性腫瘍の約15%を占める癌で喫煙との関連が強く示唆されています。発症部位により声門型、声門上型、声門下型に分類されます。発症頻度は声門型が最も多く50-60%程度で、発症早期から嗄声を来すため早期発見されやすい疾患です。次いで声門上型、声門下型の順になります。進行癌で喉頭全摘出術を行った場合、声を喪失するため電子喉頭や食道発声などの声のリハビリテーションが必要となります。

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